20

4/9
前へ
/161ページ
次へ
「オレんちは家事分担なんだけど、仕事が忙しいとなかなかねー。そうすると、奥さんから”妻は母親じゃありません”って、叱られちゃって」  そう言いながら、斎藤君はバツが悪いのか頬をポリポリと掻いている。  確かに、妻に母親の役割を求める男性は多い。  健治も家事分担の約束をいつの間にか反故にして、私がすべての家事を引き受けるようになっていた。  でも、いつも心の中に不満をため込み、健治に嫌われないように顔色を窺っては、斎藤君の奥さんのようにハッキリと意思表示をしていなかった。  夫婦なんだから言いたい事は言って、お互いの出来る事、出来ない事をすり合わせていれば、不満もたまらなかったはず。  それに、私には何をしても許されると、健治に軽んじられる事もなかったのかも……。  そんな考えに囚われている私の耳に山本君の声が飛び込んで来る。   「斎藤()は共働きだろ。そりゃ、奥さん怒るって!」  思わず私は、そうだそうだと、強くうなづいてしまう。  すると、三崎君も同調してくれる。 「そうだよ。斎藤が仕事の後に家事をするのがキツイって思うなら、奥さんだって同じだろ。子供が出来る前に改善しないと、奥さんがワンオペで切り盛りしないと行けなくなる。そのうち、旦那が居ない方が楽だって気づいたら大変だぞ」  三崎君の結婚に対しての考え方が、私の考え方と似ているような気がして、そっと、横に居る三崎君を見つめてしまう。  するとその気配に気づいたのか、三崎君がこちらを向き、彼の優しい瞳と視線が絡んだ。  
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

302人が本棚に入れています
本棚に追加