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「今日は、みんなに会えて楽しかった」 「楽しんでもらえたなら、誘って良かったよ」 プチ同窓会も次回の開催を約束してお開きになった。 2次会が無いのは、幹事の渡部君が奥さんとの仲直りのためにそそくさと帰って行ったから。 それを笑顔で見送って、 それぞれが家路についた。 私は三崎君と一緒に大通りへ歩きだす。  ネオン煌めく夜の街。  ふわふわとした気持ちになるのは、きっとお酒のせい。 「せっかく久しぶりに会ったのに、相談会みたいになったよな」 「ふふっ。なんか、みんな色々言っていても、なんだかんだ幸せそうだったね」 「そうだな。急いで帰って行く渡部が、特に幸せそうだった」  絶対に仲直りするんだと言う気持ちが、伝わるような焦り具合で、渡部君は駅へと走って帰ったのだった。 「うん。渡部君、奥さんを大好きなのが滲み出ていて、ちょっと羨ましかったなぁ」  そう口にすると、ナゼか寂しさが一気に胸へ押し寄せて、鼻の奥がつんと痛くなる。  私も幸せな結婚をしたはずだったのに、何処で間違えたのだろう……。 その様子に気が付いたのか、三崎君の大きな手がスッと伸びて、寂しい私をなぐさめるように頭をクシャリと撫でる。   「渡部、幸せオーラ全開だったもんな。俺もいいなって思ったよ」    「うん……」 同調してくれる三崎君の優しさが、ジンっと心に沁みて、その腕に縋りたくなってしまう。    
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