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この気持ちに、名前をつけたなら……。
それは、世間的にみれば、きっと「浮気」になるのだろう。
既婚者の私が、夫以外の男性に気持ちが動くなんて、許されないはずだ。
もっと一緒に居たいとか、考えたらダメだと自分でもわかっている。
それなのに、このまま朝まで一緒に居たいと思ってしまう。
こんな邪な考えをしてしまうのは、きっと、お酒を飲み過ぎたせい。
「ふぅっ」と息を吐き出し、空を仰ぐと、ビルの隙間から暗い空が見える。
そして、暗い空には、一つの星が輝いていた。
「美緒さん、タクシー来たよ」
三崎君が手を上げ、タクシーを停めた。
「三崎君……」
もう少し一緒に居たい。その言葉を飲み込み、私はタクシーの後部座席に腰を下ろした。
「今日は誘ってくれて、ありがとう。すごく楽しかった」
「俺も楽しかった」
三崎君とは、また月曜日に会えるというのに、なんだか離れ難く感じて、じっと見つめてしまう。
「……おやすみなさい」
すると、三崎君の瞳が優しく弧を描く。
「やっぱり、送って行くよ」
そう言って、三崎君がタクシーに乗り込むと、なめらかにタクシーは夜の街へと走りだした。
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