20

6/9
前へ
/161ページ
次へ
 この気持ちに、名前をつけたなら……。  それは、世間的にみれば、きっと「浮気」になるのだろう。  既婚者の私が、夫以外の男性に気持ちが動くなんて、許されないはずだ。  もっと一緒に居たいとか、考えたらダメだと自分でもわかっている。  それなのに、このまま朝まで一緒に居たいと思ってしまう。  こんな邪な考えをしてしまうのは、きっと、お酒を飲み過ぎたせい。  「ふぅっ」と息を吐き出し、空を仰ぐと、ビルの隙間から暗い空が見える。  そして、暗い空には、一つの星が輝いていた。   「美緒さん、タクシー来たよ」  三崎君が手を上げ、タクシーを停めた。 「三崎君……」  もう少し一緒に居たい。その言葉を飲み込み、私はタクシーの後部座席に腰を下ろした。   「今日は誘ってくれて、ありがとう。すごく楽しかった」 「俺も楽しかった」  三崎君とは、また月曜日に会えるというのに、なんだか離れ難く感じて、じっと見つめてしまう。 「……おやすみなさい」  すると、三崎君の瞳が優しく弧を描く。 「やっぱり、送って行くよ」  そう言って、三崎君がタクシーに乗り込むと、なめらかにタクシーは夜の街へと走りだした。         
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

303人が本棚に入れています
本棚に追加