22

1/10
前へ
/161ページ
次へ

22

Side 健治 *  シティホテルの一室。  テーブルの上に置かれたウイスキーグラスに手をのばした。  しかし、カシャッと指先がグラスにぶつかり、手元からグラスが消え、気が付けば足元に転がっていた。  ウイスキーの香りが部屋に立ち込め、いっそう酔いが深くなる。   「ふふっ、だいぶ酔っているわよ。健治」 野々宮果歩の腕がスッと動き、綺麗にネイルが施された指が、絨毯の上に転がるグラスを拾い上げた。 「悪い……」  本当は悪いなんて、これっぽちも思っていない。  俺は、野々宮に無理やり呼び出され、仕方なくホテルの部屋(ココ)に居るのだ。  これが、酔わずに居れるものか。  そんな俺を、野々宮が低い位置から上目遣いで覗き込む。  少しつり上がった大きな瞳、ぽってりとした赤く染まる蠱惑的な唇は、男好きのする顔だ。  その赤い唇が動く。 「ねえ、健治はそのまま動かないで、口でしてあげる」  そう言って、野々宮は俺のズボンのチャックをチリチリと下ろし始めた。 「やめてくれ……」  拒絶とも言えない声を上げると、野々宮はニヤリと笑う。 「私と一緒に部屋に入った時点で、こうなるってわかっていたでしょう。いまさらよね」 「でも、いつまでも続けられる関係じゃないだろう」  俺の言葉など、どうでもいいように、野々宮は楽しそうにふふふっと笑い、俺のズボンの前をくつろげた。 「楽しめる時に楽しむ関係よね。じゃあ、今を楽しまなくちゃ。普段できないようなこと、し・て・あ・げ・る」    
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加