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22
Side 健治
*
シティホテルの一室。
テーブルの上に置かれたウイスキーグラスに手をのばした。
しかし、カシャッと指先がグラスにぶつかり、手元からグラスが消え、気が付けば足元に転がっていた。
ウイスキーの香りが部屋に立ち込め、いっそう酔いが深くなる。
「ふふっ、だいぶ酔っているわよ。健治」
野々宮果歩の腕がスッと動き、綺麗にネイルが施された指が、絨毯の上に転がるグラスを拾い上げた。
「悪い……」
本当は悪いなんて、これっぽちも思っていない。
俺は、野々宮に無理やり呼び出され、仕方なくホテルの部屋に居るのだ。
これが、酔わずに居れるものか。
そんな俺を、野々宮が低い位置から上目遣いで覗き込む。
少しつり上がった大きな瞳、ぽってりとした赤く染まる蠱惑的な唇は、男好きのする顔だ。
その赤い唇が動く。
「ねえ、健治はそのまま動かないで、口でしてあげる」
そう言って、野々宮は俺のズボンのチャックをチリチリと下ろし始めた。
「やめてくれ……」
拒絶とも言えない声を上げると、野々宮はニヤリと笑う。
「私と一緒に部屋に入った時点で、こうなるってわかっていたでしょう。いまさらよね」
「でも、いつまでも続けられる関係じゃないだろう」
俺の言葉など、どうでもいいように、野々宮は楽しそうにふふふっと笑い、俺のズボンの前をくつろげた。
「楽しめる時に楽しむ関係よね。じゃあ、今を楽しまなくちゃ。普段できないようなこと、し・て・あ・げ・る」
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