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結婚してから、わたしの生活は何かが欠けている。それは、気の所為では無く、心の中で小さな不満となって燻り続けていた。
父が選んだ夫は真面目が取り柄の融通が利かない男だ。
気の利いたお店に連れて行ってくれる事も無ければ、プレゼントをくれる事も無い。
自分が行きたければ行けばいいし、何か欲しければ自分で買えばいいというスタンスだ。
それに、結婚当初あったSEXも、あの一件以来無い。
そう、夫の成明とは、セックスレスになっている。
そのセックスレスになった一件、それは結婚後、間もなくの出来事だ。
健治と別れ、親の薦めでわたしは、しぶしぶ成明と結婚した。
もともと、結婚相手は緑原総合病院を継げるような医者である事が、親から出されていた絶対条件だったから。
不満を心の隅に抱え、始まった成明との結婚生活は、思っていたより悪いものではなかった。
父に借りのある成明は、わたしの行動にとやかく口を出したり、家事をお手伝いさん任せにしている事に文句を言ったりしない。
時折、義務のように、夜、成明の相手をするのも悪くはなかった。
テクニックに不足はあるものの、成明はベッドの中でも従順だった。
夫に干渉されず、親からのお小遣いで遊ぶお金はいくらでもある。
わたしは、気の乗らない結婚をして、結局のところ、自由気ままな生活を手に入れたのだった。
暗雲が立ち込めたのは、結婚生活が3ヶ月目を終えようとしていた頃だった。
わたしは体調に異変を感じていた。
食事をしようとすると、胃が突き上げられる。
ただの吐き気なら胃腸炎なのかもしれない。けれど、胸が張って、ブラの中が苦しい。
もしかして……。
と、不安が脳裏をよぎる。
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