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 お風呂から上がって洗面所で髪を乾かしながら、この後、どうしようかと考える。出来る事なら、今は健治の側に居たくない。問題から目を背けているのは、わかっている。でも、直ぐに結論を出せるほど強くない自分がいる。  誰かに相談したいけど、日曜の昼に急に会える友達を思い浮かべることが出来なかった。    アラサーの年代、結婚していれば家族と過ごす、フリーの友達は仕事やデートで忙しい。  でも、自分の気持ちを整理するのに誰かに聞いてもらいたかった。  鏡を見ながらヘアートリートメントを付け前髪を整え、大人になったはずの自分と向かい合うと思わず言葉がでた。   「優柔不断で、情けないなぁ」  もうすぐ、30歳にもなるのに10代の頃と比べて精神的な進歩が無い。  10代の頃は、30代ってちゃんとした大人のイメージで、自分も30代になったら自然とちゃんとした大人になるのかと思っていたのに……。 「ぜんぜん、ダメ」  周りの人たちは、ちゃんと大人だと思う。それともみんな大人になったフリをしているだけなのだろうか? 「そうだといいなぁ」  鏡の中の自分は、大人のフリも上手く出来ない不器用なまま。 「やっぱり、情けない」  はぁー、っと大きなため息を吐くと、幸せが逃げていくような気がした。  バスルームから寝室に移り、クローゼットを開けてラフな服装に着替え、リビングにいる健治へ声を掛ける。 「私、実家に行ってくるね」  ソファーに寝そべりTV画面を見ている健治は、興味なさそうな声で「んー。いってらっしゃい」と、手をひらひらさせた。    一緒に居なくていい事にホッとする。  
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