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 健治は、私を愛していると言いながら、私を不安にさせる。  誰しも、一瞬気の迷いや日常に潜む誘惑に、心が揺らぐ事があるだろう。  でも、一生の誓いを立てた伴侶が居るならば、伴侶を思い理性を働かせるべきだと思う。  三崎君の優しさにグラグラしている私が言えないか……。 「美緒、食欲ないの?」  母の声に思考が戻る。 いけない、朝ごはんの最中だった。 「ううん、そんなことないよ」  私、慌てて止まっていた箸を動かした。  気がつけば、健治の事を考えてしまいっている。頭の中で考えるだけで、何も進まない。優柔不断でダメな自分が嫌だと思う。  こんなに気になるなら、健治に言えばいいのに……。 「ごちそうさまでした」  やっと朝ごはんを食べ終えた私は、台所に食器を下げ、それを洗いはじめた。母も食べ終えた食器を下げに台所に入って来る。 「美緒、大丈夫?」 「うん、それも洗っちゃうね!」  心配そうに眉を下げる母に笑顔で答えた。 「大丈夫だよ。それより、支度しておばあちゃんの所にいかなくちゃ。あっ、お父さん、まだ寝て居るんじゃない?起こして来るね!」  パッパッと濡れた手を振り、雑にタオルで拭った。  そんな私を見て、母の顔が綻ぶ。 「いつまでも子供みたいな事して!」  そう、年齢を重ねて大人になったはずなのに、何も進歩していない。  私は、いつも誰かが助けてくれるを待つばかりで、自分の事を自分で決断をしていない。精神的に幼かったのだ。  失敗しても帰る家もある。  だから、大丈夫だと心から思う。 「だって、お母さんの子供だもん」  あはは、っと笑いながら、私は歩きだした。
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