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『祖母の容態が悪化して、昨日入院しました。 私も昨晩は実家に泊まり、今からまた病院に行きます。 お昼に帰えるのは無理そうです』  健治へメッセージを送り、視線を窓の外へ向けた。  父の運転する車の中、左へ曲がると緑原総合病院が見えてくる。    広大な敷地に立つ大きな建物、地域の医療を支える急性期病院。  病院のパンフレットをめくると、医院長の挨拶のページがあり、野々宮果歩の父親である野々宮重則の顔写真が掲載されていた。  写真を見た印象として、正直なところ病院の先生というより、政治家のような権力者が持つ独特な雰囲気があった。  この人が、娘の不倫を知ったなら、どういう行動に出るのだろうか?  なんて、少し意地悪な考えが浮かんでしまった。  気持ちがすさんでいるなぁ……と自分でも思う。  何の証拠もないのに、言ったところで信じてはもらえないはずだ。  なんにしても、証拠が必要なのだ。  今日だって、GPSでの追跡が失敗してしまい、健治がどこで何をしているのか分からず仕舞いだ。  確実なのは、探偵でも頼めばいいのだけれど、あっという間に100万200万とお金が掛かると聞いたことがある。  車が一台買えるほどの大金をつぎ込む価値があるのだろうか。    結婚して僅か2年で、子供もいない。そんな状態で離婚となったとして、どれだけの慰謝料が取れるのか。    ささくれ立った気持ちを静めるように大きくため息を吐いた。
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