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「いや、デパ地下の催事だったから」 健治は、こう言う時に頭が回る。 営業職という仕事柄、取引先のお土産を買いに、デパートに行く機会が多い。 どの商品が良いとか、売り場の配置についても私より詳しいと思う。 デパ地下のブースで行われる催事の期間は、水曜日から火曜日までの1週間。そして、今日は日曜日だ。明日から仕事の私には、健治のウソを確認しに行くチャンスすらない。 そもそも、みなとみらいのホテルに泊まったという証拠も、野々宮と一緒にいたという証拠も、何もない。ただの憶測だ。 健治が、友人と飲みに行って、ビジネスホテルに泊まったと言われれば「そう」としか言えない。 ただ、私に内緒で外泊したというのは事実だ。 私に内緒にする理由(わけ)は、やましいことがあるからだと思う。 「なんだ、残念。このお弁当、栢浜(かやはま)だとみなとみらいまで行かないと買えなかったから、栢浜(かやはま)駅で買えるなら、いいなって思ったのに」     私は大げさに残念がって、健治の反応を窺った。  けれど、健治は余裕のある様子で、うれしそうに微笑む。 「ん、そんなにお弁当気に入ってくれたなら、良かったよ」  私の牽制などするりと擦り抜け、なかなか尻尾をつかませない。  こうやって、今までも上手く不倫を隠して来たんだ。  だから、私は直球勝負をかけてみる。 「ところで、昨日の夜、健治はどこに居たの?」  
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