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 今、私は結婚生活の分岐点に立っている。健治の浮気を見なかった事にして、このまま夫婦として暮らしていくのか、別れて一人になるのか。  母は子供が居ないうちにやり直しをしなさいと言った。どの方向にやり直すかは、自分次第なんだろう。  このまま浮気に目を瞑り夫婦生活を続けていくならば、子供もできるだろう。  子供……。  私は、健治との子供を産み、育てて行くのだろうか?  健治と野々宮果歩の関係を知らない時なら、子供が欲しかった。  でも……今は、怖い。  信頼関係、愛、未来、今まで当たり前のように在ったものが、棒倒しの砂山のようにどんどん無くなって、今にも棒が倒れそうなぐらい不安定な状態になってしまった。  夫婦ならば、ちゃんと話し合って乗り越えて行かないといけないのに、自分の殻に直ぐ閉じこもってしまうダメな自分。  上手く自分の気持ちをぶつける事も出来ない。    夜遅く、家に帰ると健治はすでに眠っていた。  その寝顔に問い掛けたくなる。 「私のことをどう思っているの?」  でも、その言葉を言う勇気が無いのは、その先の答えを見たくないから。今まで積み上げてきた時間が崩れるのが怖いから……。    ふたつ並んだシングルベッドの空いた隙間が二人の距離に思えた。  
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