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 思考に囚われている私の耳に里美の声がする。  その声に慌てて顔を上げた。  瞳のフォーカスは、里美のプルンと柔らかいピンクの唇に合う。  あの唇とキスをしたんだ。  ピンクの唇が動く。 「先輩」    私は、その唇から目が離せない。 「先輩?」   「あっ、ああ、ごめん、ボーっとしちゃった。薬の確認ありがとう。お昼ご飯食べに行こうか」   「先輩のおごりですか?」    里美に、上目遣いに悪戯な瞳を向けられる。子猫のような瞳は、艶を含んでいるように見え、ドキンと心臓が音を立てる。   「しょうがないなぁ。ご馳走するよ」  自分の中に湧き出た得も言われぬ感情。それを隠すように笑みを浮かべた。 「わたし、Café des Arcs (カフェ デ ザーク)がいいなぁ」   「おごりだと思って!」 「ドリンク代は、わたしが出しますよ」  里美が私の腕にするりと腕を絡ませると、柔らかな胸が腕に当たる。咄嗟に腕を引こうとしたけれど、嬉しそうな里美の様子に抵抗をあきらめた。  特別な意味が無くても女同士で腕を組むことなんて、今の時代良くあることだ。でも、特別な関係を持ってしまった今となっては、気恥ずかしさが先に立ち、頬が熱くなる。そんな私に里美はチラリを視線を送り歩き出した。
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