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 高校の頃の思い出なんて、たいしたものじゃない。理系クラスで一緒だった彼のメガネをかけたクールな横顔が綺麗だと思った。そんな彼をコッソリ眺めたぐらいの出来事。アオハルの時代の淡い思い出。  ランチメニュのサーモンとアボガドサンドイッチのセットを注文する。   「先輩、ランチにドリンク付いているので、代わりにデザート頼みますか?」 「そんなに気を使わないでいいよ。土曜日も泊まらせてもらったんだし……」  触れてはいけない話題にふれてハッとし、自分で自分の口を押えた。  二人の間に気まずい沈黙の時間が流れる。 「天使が通った」  突然、里美が口にした。 「え?」 「おしゃべりをしていて、急におしゃべりが途切れた時にフランスでは”天使が通った”って、言うんですって、チョットかわいいですよね」  明るく話す里美だけれど、私に気を使っていることぐらいわかる。色々な事が一度に起こって、どうしたらいいのか分からない。立ち尽くすばかりの自分は、「ごめんね」と心の中で謝る事しかできない。  
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