5

1/11
前へ
/152ページ
次へ

5

 その後、午後の受け付け時間が始まる頃に店舗の業務に戻り、また慌しく時間が過ぎる。全ての業務が終了し、シャッターを閉めるとホッとした。 「お疲れ様でした。また明日」 「お疲れ様です」    里美と駅で別れた後、駅ナカのスーパーに立ち寄り、夕食の買い物をする。健治と二人分。毎日の事となるとパターンも限られてくるし、仕事が終わってからだと凝ったものも作れない。疲れた状態だと正直メニューを考えるのもおっくうだ。結婚当初は、交代で夕飯の準備をしたが、残業や出張の度、なし崩し的に私が全ての家事をするようになっていた。 「仕事で疲れているのは、私もなんだけどなぁ」  思わず愚痴が口をつく。  野菜やお魚を買い、帰りの電車に乗り込む。ネギの飛び出した袋を下げて、電車に乗るのも最初は抵抗があった。けれど、最寄り駅で買うより鮮度も良く値段も安い。 「この努力、きっと分かっていないよね」  私なりに色々頑張っていると思うけれど、それだけでは足りなかったのだろうか?   それとも、どんなに頑張っても ”浮気は男の甲斐” なのだろうか?    健治の元カノである野々宮果歩とは、大学も一緒だった。緑原総合病院の一人娘である果歩は、大病院の後継ぎだ。その関係で、どこかのお医者さんと結婚したと聞いた事がある。それなのに健治とまだ会って続いていたなんて……。  大学時代、健治の横で笑っていた果歩は女優のような美人で、二人はお似合いのカップルだった。    どんなに家事を頑張ったとしても、彼女の華やかな容姿の前では、太刀打ちできない。  果歩の華やかな美しさの前では、私なんてつまらない女なのだろう。
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

261人が本棚に入れています
本棚に追加