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「あっ!」  ガシャ。  お皿を持ち上げた拍子にカップが倒れて、排水口の角にぶつかり、欠けてしまったのだ。 「おーい、大丈夫か?」  リビングでソファーにくつろぎながらTVを見ている健治が声を掛けてくる。 「うん、大丈夫。でも、カップが欠けちゃった。お揃いで買って気に入っていたのに」  そうだった、結婚して直ぐに健治と一緒に買ったやつだ。  ショップで貰った使い古しの紙袋に入れてからゴミ箱に捨てると、残ったのペアカップの片方が気になる。  同じものをもう一度買って、ペアにするか。新しいデザインのモノを買うか……。  少し考えて、新しいデザインを探そうと思った。 「おい、ケガとかしてないか?」  キッチンの入口に健治が立ち、心配そうな顔を向けた。   「うん、お騒がせだったね。もう片付けたから。お揃いで買ったカップが欠けたから捨てちゃったの。片方だけ新しいの選んで買ってくるね」 「また、お揃いのデザインにしようよ」 「え?」  驚いていると健治の腕がスッと伸び、私を抱き留める。   「美緒、もう片付け終わったんだろう?」 「うん」 「一緒にお風呂入ろう。美緒がご飯作ってくれたから、シャンプーしてあげる」  艶の含んだ瞳で、私を見つめる健治。 髪に指を絡め、頭に軽くキスを落とす。優しい素振りで、浮気をしている事など微塵も見せない。 「ねえ、健治。私の事、どう思っているの?」  そう口にした私の心臓は、ドクドクと早く波打つ。
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