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「じゃあ、買い出しに行きましょう。泊まるなら下着とお酒ですね!」  里美は、明るく可愛い職場の後輩。そして、気が回る。今日の事も里美が一緒でなかったら きっと、取り乱していた事だろう。  そんな里美に手を引かれたまま緩やかな坂道を下り、やがて、量販店にたどり着く。  ごちゃごちゃの店内は大人のアミューズメントパークのようで、ワクワクさせる雰囲気。店内のBGMも明るく繰り返し放送され、購買意欲を煽られる。 エスカレーターに乗り3階へ上がると、レディースファッションのフロアになった。  レディースの下着売り場は、マネキン人形が華やかなレースのブラとショーツに身を包み出迎えてくれる。  ふたりで、わざとらしいぐらいはしゃぎ、過激な下着を広げて見せてはキャーキャー言いながら物色した。 「先輩、赤い紐パンは、大人可愛い装いができますよ!」 「あら、里美が履いて見せてくれるの?」 「先輩の下着を選んでいるんですよ!こっちの黒いキャミはどうですか?」 「私より、里美が着て見せてよ」 「そんなにわたしのセクシーな姿が見たいんですか?しょうがないですね。先輩だけには特別に見せてあげます。ちょっとだけですよ」  ふたりで冗談を言っては、笑い合い随分と気を紛らわした。  そして、里美の家に着いてから、ふたりでチューハイの缶を開けた。  きれいなブルーのグラスにチューハイを注ぎ「乾杯!」を合わせると、コスメやファッションの話に花を咲かせ、時折仕事のグチを語る。  今、考えなければならない現実から目を背けるようにお酒を煽り、したたか酔い始めていた。   「仕事のストレスは、ライブではしゃいで晴らすのが健康的だよね」  口にしてからシマッタと思った。せっかく話が逸れていたのに、わざわざ今日の出来事を思い出す事を自分で言ってしまったのだ。
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