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 「旧姓の浅木のままでも良いですよね。先輩」  里美が私に向かって、そんなことを言う。暗に離婚を示唆されているようで居心地が悪い。 「もう、何でも好きに呼んでください」  2対1では分が悪すぎる。半ばやけになってパスタを頬張った。  三崎君と里美が、クスクスと笑い。二人して好き勝手言って、人の名前の呼び方を決めるための話し合いが始まった。  私のことを小動物みたいだとか、いじられキャラだとか、しっかり聞こえていますよ。って、いうか、あなた達、初対面でしたよね。  なんで、同級生だった私より話が弾んでいるのでしょう⁉  結局、二人で勝手に盛り上がり、私のことを名前呼びにすることで落ち着いたらしい。 「ね。美緒先輩」 「美緒さん」  耳馴染みのない呼ばれ方に、心臓が跳ねる。  「なんだか、名前呼び、むずがゆい感じ」    私がそう言うと、二人は顔を見合わせ、ニヤリと悪い笑顔を浮かべる。 「菜の花のパスタ美味しいですね。美緒先輩」 「サラダのドレッシグも和風でいい味だと思わないか?美緒さん」   「午前中も処方薬枚数多くて大変でしたね 美緒先輩」   「午後の診察も忙しそうだから処方薬枚数多そうですよ。美緒さん」  話の語尾に必ず私の名前を呼んで揶揄う。  だから、あなた達初対面だったはず。  なんで、私イジリに息ピッタリなんですか?
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