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 「もう、好きに呼んで下さい!」   二人は、私の様子を見てクスクスと笑っている。  そんなタイミングで、食後のサービスドリンクを和成くんが運んで来た。 「3人で、楽しそうですね」 「違いますよ。二人が私の事を揶揄うんですよ」  私いじりする二人の事を和成くんに言いつける。すると和成くんは優しく目を細めた。   「悠正さんが、こんなに楽しそうなの初めて見たかも、僕の中では、いつも眉間にシワが寄って機嫌が悪そうなイメージなんだ」 「実家に行くと親や兄貴の小言がうるさいから渋い顔しか出来ないよ。お前らだってそんなに年が変わんないのに、俺にお年玉をねだるし。研修医の安い給料を思えば、笑える環境じゃない」    ムスッとしながらそんなことを言う三崎君の様子がおかしくて、思わず吹き出してしまった。 「三崎君のイメージが全然違う。高校の時、落ち着いていてクールな印象だったのに」 「えっ? そうかな? まあ、受験があったからみんな必死で勉強していたよな、あのクラス。思えば、寂しい青春だったなぁ」  同意を求められ、ウンウンと頷いた。 「大学出ても研修医なんて、いいように使われるし、かわいそうだろ?」  ウンウン。 「おまけにいいなぁ。と思った子はサッサと嫁に行っているし、かわいそうだろ?」  えっ? 私の事? 揶揄っているの?  思わず、返事に詰まっていしまう。  すると里美が横から割り込んできた。 「美緒先輩は、私のですからね。三崎先生には、あげませんよ!」 「なっ、かわいそうだろ?」  と、返されて、私は目を丸くする。そして、じわじわと笑いがこみ上げて来て、耐え切れずプッと吹き出してしまった。  三崎君がこんなに明るい人だとは、思ってもみなかった。
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