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 朝、里美と気まずい思いをして、お昼休みが不安だったけれど、三崎君が加わったことで楽しく過ごせた。三崎君とも仕事の仲間として、これからもこういう機会が増えるだろう。  楽しいお昼休みで気分を持ち直し、午後の業務があわただしく過ぎて行く。病院から本日受付分の患者さんの診察終了の電話を貰い、やっと、一日の業務が終わった。 「お疲れさまでした」と声を掛けて、事務員さん達を先に返し、会社に業務報告を送り、指紋認証で退勤をする。 「里美、お疲れ様。帰ろう」  すると里美は何が言いたげに、私をジッと見つめて来る。 「先輩、家に帰るんですよね。大丈夫なんですか」 「えっ?」 「旦那さんの浮気の事をどうするんですか? あやふやな事をしていたら、この先、困る事になるんですよ」 「里美、心配してくれてありがとう。言っていることは、分かるんだ。けれど、好きで結婚して、生涯を誓って、いきなり嫌いになんてなれない。まだ、どうしたらいいのか分からないの」 「そうやって、ズルズルと現状維持でいいんですね」  現状維持なんて、望んでいないと、首を横に振る。  里美の真剣な視線が私を捕えていた。  でも、" 嫌いになったら別れてお終い " の、ただの恋人同士とは違う。婚姻届けを出した夫婦だから、そう簡単に割り切れないのは、仕方のない事だと思う。
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