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 約束の日。  仕事の後、ターミナル駅で、健治と待ち合わせをして、案内されたお店は、メインの道より一本入った所にある一軒家。  こんな駅近に竹が綺麗に植え込みされ、敷石や石灯篭まである一軒家があるなんて、その上、案内されたのは個室のお部屋。確かに、”いいお店に”とは言っていたけれど、豪華すぎる。   「健治、スゴイお店だね」 「でも、個室だからマナーとか気にしなくていいだろう? 美緒の30歳、節目の誕生日だからフンパツしたんだ」 「ありがとう、嬉しい」  このところ、愛されているのか自信がなくて、心がざわつき気持ちも不安定だった。  こんなに素敵なお店を選んでくれていた事に ”大切にされている” ”愛されている” と感じて、少し不安が消えたよ気持ちになる。それに、マナーを気にしなくても良いように個室という気遣いも嬉しく思った。  先付けに蒸し鮑の旨出汁ジュレから始まり、お凌ぎに海老湯葉巻き真薯、椀物、お刺身と美しく盛り付けされた料理が運ばれてくる。芸術作品のように、キレイに盛り付けされたお料理に感激した私へ、健治が優しい笑顔を向けた。   「美緒が喜んでくれて良かったよ。普段仕事で忙しくて、夜も遅いし、家の事もみんなやってもらっているから、感謝の気持ちを込めて」  お互いの江戸切子のグラスにお酒を注ぎ合う。スパーリングタイプの日本酒がシュワシュワと優しい音を立てた。 「美緒、お誕生日おめでとう」 「ありがとう、本当に嬉しい」  健治が、私を見つめながら、グラスを持ち上げた。 「乾杯」
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