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 しゃくりを上げながら泣いている間、里美は黙って背中をさすり続けてくれる。  一頻り涙を流すと、やっと気持ちも落ち着いてくる。 「里美、ありがとう。泣いたりして、ごめんね。これ、片付けようね」  立ち上がろうとした時、無茶なほど飲んだチューハイの酔いが回り、グラリと視界が歪む。 「あっっ!」  そのまま里美を引っぱり込み、二人で縺れるようにソファーに倒れ込んでしまった。  目を開けると里美の顔が、びっくりする程、近くにあった。  下から見上げた里美の顔は、お酒のせいか、艶を含んで色っぽく見える。  長いまつ毛に縁取られた仔猫のようなつぶらな瞳、きめ細やかな肌、柔らかそうなピンクの唇……。  その唇が動く。 「先輩……」  里美が呟き、私の唇に里美の唇が重なった。  女の子特有の甘い香り、柔らかく重なる唇。  弱った心にそっと沁み込んでくる。  眦から一筋の涙が落ちた。  なぜ、涙がこぼれるのだろう。この涙に何の意味があるのだろう。  酩酊した頭では、考えられないのか、考えたくないのか、答えは見つからない。 「先輩、泣いていいんです。わたしが慰めてあげます」  里美は、涙を唇で掬い。再び私の唇にキスを落とす。  唇を軽く甘噛みされ、口の中に舌が忍び込む。  里美の舌先が私の歯列をなぞり、口腔内を蹂躙される。  クチュクチュと水音が聞こえ、深いキスに息が上がり始めた。
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