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 意識が戻ると見慣れない天井、白いカーテンが下がり、私の腕には点滴が注射されていた。  どこかの病院に運ばれたんだ……。  お店の廊下で倒れるなんて、きっと大騒ぎになったのだろう。  果歩は、その騒ぎの様子を見て、あの紅く染まった唇で、私の事を笑っていたのかも……。    モゾモゾと寝返りをうつと、カーテンが開き、健治が顔を見せた。 「美緒、大丈夫か?」  ベッドの横にある椅子へ腰を下ろし、心配そうに覗き込みながら、私の顔へ手を伸ばす。  健治に触れられると思うと抵抗を感じて思わずビクッと身をすくめた。 「どうした? 気持ち悪いのか?」  優しくされると、どうしたらいいのかわからなくなる。  でも、もう、私の限界……。 「お店のトイレで野々宮さんと会ったの。もうすぐ、離婚するって言っていた」 「えっ? 野々宮?」  健治から、ヒュッと息を飲む音が聞こえた。  私の視界は涙で歪み、健治の顔がぼやけて見える。 「私、先週、渋谷に居たの。健治と野々宮さんがホテルから出て来たのを偶然見ちゃったんだ」  そこまで言うと涙がスーッと流れ落ちた。  悲しくもあったけれど、胸の中にずっと溜まっていた重いモノを吐き出して、ホッとしたような不思議な気持ちになった。
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