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 薬局の奥にある事務所のPCで出勤の指紋認証を終えた後、会社からの連絡メールのチェックをする。その後、分包機の掃除をしようと立ち上がったら、フワッっと目の前が一瞬暗くなった。倒れる前にその場へうずくまり、症状が落ち着くのを待つ。半日の勤務だからと思ったけれど、思ったよりも貧血の症状がひどいのかも。 「おはようございます」  里美の明るい声が聞こえて、足音が近づいてきた。その足音が途中でパタパタと早くなる。 「先輩どうしたんですか?」 「ごめん、ちょっと、貧血でクラッと目眩が……」 「少し待ってくださいね。今、隣に連絡します」    そう言って、里美は電話をしながら、心配そうな瞳を向ける。 「先輩、隣の先生が診察時間前に診て下さるって、行きましょう。先輩、立ち上がれますか?」 「うん、大丈夫そう。心配かけてごめんね。隣の病院には一人で行ってくるよ。里美には店舗の事、お願いしてもいい?」  ゆっくりと立ち上がり、お財布に保険証が入っているのを確認して隣の病院へ向かった。受付で保険証を提出し、問診票に記入して、顔見知りの事務員さんに渡すと、直ぐに内科へ入るように案内してくれる。  待合室で既に待っている患者さんたちに申し訳ないなっと思いながら、内科の診察室のドアに手を掛けた。 「おはようございます」と診察室のドアを開けて ”あっ”と思った。
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