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 テーブルの上にお揃いのマグカップが置かれた。私の分のカップにはミルクたっぷりのコーヒーが入っている。  新しいペアカップだ。  健治が買って来たんだと思った。  両手でコーヒーカップを包み込んで、緊張して冷たくなった指を温めながらコーヒーに口を付ける。  目の前に座った健治も緊張しているのか、深呼吸していた。  そうだよね、原因は健治が作ったのだから……。  そして、話を切り出す。 「今まで健治の事を信じていた。けど、今は信じられない。だって、ずっと裏切られてきたんでしょう……。野々宮さんとの関係って、私が見た1回じゃないよね。結局、私と結婚したのだって、野々宮さんとの不倫を続けるのに、隠れ蓑として都合が良かったからなんでしょう?」  ここ数日、ずっと言いたくて飲み込んでいた言葉を吐きだすと、感情が高ぶって、涙がこぼれそうになる。  でも、泣きたくなくて、唇をグッと引き結び、涙をこらえた。  健治は眉根を寄せ、テーブルの上に手をついた。そして、苦しそうな表情を見せ、頭を下げる。 「ごめん、俺が悪かった。一時の気の迷いだったんだ。野々宮にはキッパリと別れを告げてある。俺は、これからも美緒と一緒に居たいと思っている」  健治の言葉に、心の中がかき乱される。  別れてる? でも、なんで果歩は、あんな事を私に言ったの?    
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