9

4/13
前へ
/152ページ
次へ
「噓つき……。野々宮さんと学生の頃からずっと続いていたんでしょう。……不倫を続けるのに、都合のいい私と結婚したんでしょう。野々宮さんとの不倫のカモフラージュに私は打って付け相手だったんでしょう?」    心に溜まっていた言葉を吐きだした。  こんな事を言っても、自分の惨めな立場を認めるだけだって、分かっているのに……。  堪えていた涙も一緒にこぼれ落ちていく。  泣いても何も解決しないのは知っている。けれど、我慢できなかった。  健治は顔を上げ、真っすぐ私を見据えた。そして、ゆっくりと口を開く。 「美緒と再会した時には、野々宮とは別れていた。友人の結婚式で久しぶりに会った美緒が綺麗になっていて、それで、声を掛けたんだ。都合よくとか、カモフラージュだなんて思ったことない。美緒の事が好きだから結婚したんだ」  真剣な表情で語る健治を信じても良いのだろうか?   信じたい気持ちと信じられない気持ちの間で揺れ動き、私は押し黙る。 「昨日は、美緒の誕生日だったろう? 最高の誕生日にしたかったのに、ごめんな。あの店は、以前、接待で使った事のある店なんだ。野々宮と行ったことはない。ましてや野々宮が来ていたなんて知らなかった。野々宮にはキッパリと別れを告げてあるんだ。これからは浮気もしない。だから俺との未来を考えて欲しい」  健治の言っている事は本当なの? 信じていいの? 野々宮さんと別れたの? 浮気もしないの?  頭の中には、疑問符が浮かぶ。     
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

254人が本棚に入れています
本棚に追加