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 本日のランチ、タコのペペロンチーノが運ばれてきた。  それを「いただきます」と、食べ始めると三崎君が思い出したよう話し出す。 「あっ、そう言えば、今度の勉強会の日程なんだけど、希望ある?」 「うちは、いつでも大丈夫です。蒔田医院のご都合に合わせます」 「お弁当の希望は?」  隣の医院で行われる勉強会は、昼休みの時間帯を利用して開催される。  新しく発売になる薬の情報や、今まで取り扱いをしていなかった薬が新たに採用になった時など、薬の販売メーカーの担当MR(医薬情報担当者)が専門的な説明をする。その際にメーカーからお弁当の支給があり、かなり豪華な内容だ。そして、和食が良いとか、中華が良いとか、希望を出せばリクエストに沿ったお弁当を出してくれる。   「和食が人気ですけど、蒔田医院のみなさんで決めて頂いていいですよ」 「勉強会のお弁当って、豪華ですよね。たまに金額調べちゃったりして、びっくりします。自分じゃ絶対に買えない金額なんですよ」  里美が、そんなことを言い出した。  いつも高そうなお弁当だな、っと思っていたけれど、調べるという発想が無かった。  いくらぐらいの金額なのか、俄然興味が湧く。 「えっ!お弁当の値段聞いても良い?」 「ふふっ、気になりますよねー」 と、里美がニヤリと悪い笑顔を浮かべ、調べた金額の発表を始めた。 「店舗だけの勉強会の時は1500円から2000円で、医院と一緒だと2500円から3000円です」 「すごっ」    三崎君も驚いている。私も口に出さなったけれど、かなり驚いている。  だって、勉強会に参加しない他のメンバーの分までお弁当が用意されていて、医院での勉強会だと1回につき20個から30個のお弁当が配られる。  薬局店舗だけの勉強会なら5人分でお弁当が1個2000円なら1万円で済むけれど、医院での勉強会だとMAXでお弁当30個で、9万円にもなる。  これは、メーカーが如何にこの医院を大事にしているのかアピールする場にもなっている。それによって、病院側が取り扱いメーカーを指定するという忖度にも繋がっているのだ。  
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