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 健治は製薬会社アルゴファーマのMR(医薬情報担当者)だから、お弁当を提供する側だ。  自分の担当している薬剤の情報提供のみでなく、営業力が問われ、医院の先生方とお付き合いも頻繁にしている。付き合いで、夜遅くなったり、休日にゴルフなどにもよく出かけている。それに加えて、勉強会を開き、病院や薬局の我儘を聞いて、お弁当の手配までしているのかと思うと気の毒にも思えた。  でも、夜遅くなる事や休日に出かける事があたり前になり、その隙に浮気をしていたのだ。  それを思うと複雑な思いに囚われる。  思わず、「はぁー」っと大きなため息が洩れた。 「どうしたの? 心配事?」  三崎君に訊ねられ、なんでもないと首を振る。 「美緒先輩、ため息ばっかり吐いていると幸せが逃げていきますよ」   「そうだね。ゴメン」  私のせいで、沈んでしまった雰囲気を変えるように三崎君が口を開いた。   「あっ!そうだ。美緒さん、SNSやっている? 高校の同窓会って程のもんじゃないけど、集まれるヤツらだけで集まろうって話が出ているんだ」   「えっ、いいなぁ。楽しそう。私も参加させてもらおうかな?」    里美が笑いながら、そんなことを言い出して、私は驚きのあまり、ポカンとしてしまう。  でも、三崎君は楽しそうにうなづいた。 「いいよ。正式な同窓会って訳じゃないし、女の子増えるのは、みんな大歓迎だよ」 「やだ、冗談ですよ。あはは」 「大丈夫だよ」 「え~、本気にしちゃいますよ」  里美と三崎君の会話がポンポン弾み、なぜか里美は参加確定に⁉  待って、待って、里美まで参加表明して、私まだ行くって言っていないのに……。  オロオロする私をよそに、乗り気のふたり。 「美緒さん、スマホ出して、連絡先交換しよ!」 「う、うん。ちょっと待ってね」      スマホを取り出し、三崎君と里美と3人でSNSの友達登録をして、私は榊高校同窓のグループにも入り、ついでに3人のグループも作った。 「じゃあ、悩み事はメッセージで受け付けているから、具合が悪くなるまえに相談して」  三崎君に冗談とも本気ともつかない事を言われて、私は戸惑いながらうなづいた。  
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