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 Side 美緒  水曜日、昼休み明けの午後イチ(とは言っても午後3時前)  午後の病院の診察が始まる前の時間、私は隣の蒔田医院の診察室に入った。  さっきまで、お昼ご飯を一緒に食べていたのに、よそ行き顔で「こんにちは」と挨拶を交わす。  ランチのオフタイムの三崎君、病院でのオンタイムの三崎先生、そのギャップに緊張する。  病院では白衣のせいか、キリッとして2割増し的な感じだ。    診察用の丸椅子に腰かけると、向かいに座る三崎君の手がスッと伸び、私の顔に触れる。  貧血の具合を見ているだけなのに、近い距離がなんだか恥ずかしい。  視線のもって行き場がなくて、三崎君のおでこを見つめてしまう。 「まだ、少し貧血気味かな。疲れやすいですか?」  「はい」   前回の検査結果を渡され、医者の表情になった三崎先生から結果説明が始まった。 「この前の検査ですが、ヘモグロビン濃度が9g/Lbで低いですね。ここ数日、症状の改善が見られている様子、自律神経の乱れからくる貧血という事で、このまま経過観察でもよいでしょう。しかし、貧血は他の病気が潜んでいる事があるので、注意が必要です。それに、ストレスをため込むと直ぐに潰瘍が出来て貧血が酷くなる場合もあります」 「はい……」
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