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 日曜日。  お昼過ぎても、健治はぐったりとベッドに眠っている。それもそのはず、先週は毎日深夜の帰宅だった。  せっかく、外は晴れて気持ちの良い陽気で布団を干したいのに、疲れて寝ているのを無理やり起こすのも憚られて、洗濯物を干すだけで我慢する。  掃除機が掛けられないから棚の埃を拭いて、床クリーナーモップで簡単なお掃除。  仕事の内容が変わって忙しいのは分かるけど、やっぱり連日深夜の帰宅だと不安が()ぎる。  果歩と別れたと言っていた健治だけど、それが実は嘘で、どこかで会っているのではと疑心暗鬼に囚われてしまう。  健治を信じたいと思っていても、今まで騙されていたという事実が、心に影を落とし、私の心に黒い種を植え付ける。  それは、やがて疑念という黒い花を咲かせ、増殖を繰り返す。  そんな不安を薙ぎ払うように、抱きしめて ”大丈夫だよ” って、言ってもらいたい。  けれど、そんな時間も取れずにすれ違う日々が続いている。  壁の時計が不安の時を刻む。    
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