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Side 美緒 「最後の患者さんがお帰りになりました。お昼にしましょう」  午前中の業務が終り、スタッフに声を掛けた。  すると視界がグラリと歪み、白く濁る。 立っているのがままならず、思わずその場にしゃがみ込んでしまった。 「美緒先輩、大丈夫ですか?」   「ん、チョット立ち眩みしただけ、生理(アレ)になっちゃったから貧血が酷くなったみたい。心配掛けてごめんね」  その言葉に頷いて里美は、声を抑えて話しだす。 「先輩、妊娠は避けられたんですね。貧血が酷いのは困りものですが、取り敢えず安心しました」  そうだった。  緊急避妊ピルを購入した時、里美に散々心配を掛けてしまったのを思い出した。 「うん、私もホッとしている」 「先輩は座っていてください。お昼ご飯、コンビニで何か買って来ますね」  そう言ってお財布を持った里美は、薬局のドアを閉めた。  体が重だるくて、外に食べに行く気になれなかったから、凄く助かる。  誰も居ない薬局の待合室。その長椅子にゴロンと横になった。  健治は暫く忙しいと言っていたし、今日も遅くなるだろうから、夜ご飯は適当に済ませよう。体も気持ちも重たくて、何もする気持ちが起きない。  正直、ご飯を食べる事さえ億劫で、出来る事なら一日中寝て居たい気分だった。 「美緒先輩、ただいまー」 「お邪魔します」  里美の声が聞こえたと思ったら、もう一人、男性の声がする。  しまった、油断して、ごろ寝している時に誰か来たようだ。  私は、慌てて長椅子から身を起こした。  
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