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「美緒さん、具合が悪いんだって?」   「三崎君……」 「外に出たら、ちょうど三崎先生に会えたんで、美緒先輩が具合が悪いから今日は店舗でお弁当なんですよ。って、言ったら来てくれたんです」  里美は、きっと私を心配して三崎君に声を掛けてくれたんだろう。 「美緒さん、少しいいかな? 失礼」  そう言って三崎君は、私の頬に手を添え、下瞼をクッと下げる。 「貧血、酷そうだね。この後、医院に来て栄養剤の点滴受ける?」  午後の業務中に倒れたりしたらスタッフにも迷惑を掛ける事になる。  三崎君の好意に今回は甘えさせてもらおう。   「悪いけど、お願いしてもいいかな?」   「もちろん、先にお弁当を食べたら、移動しよう」  うなずく私を見て、里美はホッとした様子だ。 「美緒先輩、野菜のサンドイッチとプルーンヨーグルトドリンクを買ってきました」 「さすが、小松さん。鉄分の多めのチョイスだね」  三崎君もコンビニのお弁当をガサゴソと開ける。  調剤室の奥に事務所があるけれど、部外者である三崎君を入れる訳にもいかず、このまま薬局の待合室で食事を始めた。   「待合室だと、テレビがあっていいですね。昼間の番組って、グルメとか芸能情報とか、たまに見ると面白くって。あっ、ワイドショーやっている」  里美の声に誘われて、視線をテレビに移す。するとワイドショーで有名俳優の不倫騒動の謝罪会見の様子が放送されていた。 「俺、いつも思うんだけど、不倫して謝罪って、誰にしているんだろう?て、世間様なんて面白可笑しく見ているだけで、本当に謝らないといけないのは、配偶者を含めた家族だよね。こんな会見開いているヒマがあるなら、裏切られ一番傷ついているだろう配偶者に対して、誠心誠意謝って沢山話をしないといけないと思うんだ。そもそも不倫をするのが間違いなんだけど……」  三崎君の言葉に胸の奥がギュッとつかまれたように痛んだ。  私は、自分の瞳から、知らないうちに涙がこぼれている事に気が付いていなかった。    
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