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「美緒さん、どうしたんだ?」 「先輩、ティッシュあります」  里美にティッシュケースを差し向けられて、「えっ?」と思っていると、三崎君が素早く、テッシュを引き抜き、左手で私の後頭部を抑え、右手に持ったテッシュで私の顔を拭う。 「ごめん」  三崎君の声が聞こえる。  後頭部を固定されたまま、ティッシュで目の周りを抑えられて、目の周りが濡れていると気づいた。  すると、三崎君の声が聞こえて来る。 「不用意に言った言葉で、美緒さんを傷つけてしまったようだ」  私のメンタルの問題で、三崎君のせいじゃないのに、気を使わせてしまって、ごめんなさい。 「三崎先生のせいじゃありませんよ。私がワイドショーなんか付けたから」    里美のせいでもないのに、いつも心配ばかりかけて、ごめんね。  声に出すと、余計に涙がこぼれそうで、心の中で謝り続ける。 「美緒さん……」  名前を呼びながら、三崎君が私の目元を覆っていたティッシュをずらした。  目の周りが解放され、視界が開ける。  後頭部に手をまわされ固定されたままの近い距離。私の視界は三崎君で一杯になる。  ち、近い……。 「あっ!ごめんっ!!」  なぜか、めちゃくちゃ焦った三崎君の声が聞こえて来る。 「えっ?」 「擦ったから目の周りがパンダになっている」 「きゃあ!」  衝撃的な理由に涙も止まる。  慌てて立ち上がり、化粧室に駆け込んだのは、言うまでもない。
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