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「美緒さん、美緒さん」  名前を呼ばれて、意識が覚醒してくる。  瞼を開くと、三崎君の優しい瞳。 「点滴終わりました。気持ち悪くありませんか」  お医者様の顔になった三崎君は、テキパキと点滴の針を腕から外してくれる。時折、触れる指先が温かく感じられた。  カーテンの外側では、他の看護師さんが午後の診察の準備をしている気配もする。 「大丈夫です。お昼休みにご迷惑をお掛けして、すみませんでした。ありがとうございます」 「さくら薬局さんには、いつも蒔田医院(うち)が無理を利いてもらっているから気にしないで。受付の人に言ってあるから、お会計してくださいね」 「はい、ありがとうございました」  私は、受付で顔見知りの事務員さんに声を掛け、お会計をお願いする。 事務員さんは「三崎先生からお話を伺っています」と対応してくれた。  領収書と診療明細書を提示され、5千円札をトレーの上に置き、お釣りを受け取ると、不意に事務員さんが顔を上げた。   「三崎先生と仲が良いんですね」  事務員さんに笑顔で言われ、言葉の真意がつかめずに困惑する。 「親切で良い先生ですね」  と笑顔で返した。
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