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 艦載機乗りとして、アメリカ空軍でも屈指の腕前を誇るケイ・ホワイトは、ハーティ(じい)さんが持って来たスーパートムキャットの性能を確かめながら小隊の前で喋りまくっていた。 「おい、見たか。  アフターバーナーなしで編隊に遅れず付いて行けるぞ」  旧世代の代表格だったトムキャットを改良して、ステルス性能と新型エンジンを搭載したモデルをアメリカが秘密裏に開発していた機体は、途中で放り出されていた。  残っていた設計図を元に、部品をかき集めて試験機を、こしらえて来たのだった。  主翼が大きく開くと、他の機体を圧倒する迫力がある。  この可変翼と、火器管制能力の高さが魅力で、翼の動きから「猫」の耳のようだとか、偵察能力の高さから「ピーピングトム(覗き屋)」のトムなどと言われることもある。  低空飛行するラルフとアリーの小隊を見下ろし、今回も上空制圧をホワイトが任されていた。 「おいでなすったぜ。  今日のエースはどちらか、競争だ、アリー」  ヘルメットの中で軽く舌を出し、唇を湿らせると操縦桿(そうじゅうかん)を引きながらアフターバーナーに火を入れたラルフは、山なりの軌道を描きながら敵編隊の中心めがけて飛び込んだ。 「ちょっと待て、様子がおかしいぞ」  そこまで言ってアリーは、背筋に悪寒が走った。  何かいつもと違う。  ライトニングや、ハリアーのような小回りが利く機体で構成された敵編隊は、何かを狙っているような予感をさせた。 「一度やり過ごして様子を見ろ、ラルフ」  ホワイトは叫んだ。 「細かいのが揃ったって、乗り手が素人じゃあ話にならんのさ」  耳を貸さずにラルフは正面から突っ込んでいった。  立て続けに発射したミサイルを、小刻みな動きで山間に誘導しながら(かわ)して山服に衝突させてやり過ごす者がいた。  そのまま機影は山の中に消えてしまった。 「ちくしょう、どこへ行きやがった」 「しまった、上だ、ラルフ」  ふわりと大きく浮き上がったハリアーが後方上からバルカン砲の帯をホーネットに浴びせかける。  その時、さらに上方からスーパートムキャットが躍りかかり、敵のコックピットを射貫いた。  滑走路に向かうホーネットのエンジンから、黒い煙が長く伸びる。  待機していた消防車が消火剤を浴びせ、コックピットからラルフを引きずり出した。  頭部に傷を負い、ヘルメットの中に血が溜まっていた。 「へへ、ヘマやっちまったぜ。  バルカン砲の弾が(かす)めやがって、このザマだ。  神様に、チョーシこくなと叱られたな。  ホワイト、恩に着る」 「いいから、もう喋るな」  ストレッチャーに括り付けられた彼は、力なく笑った。
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