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ふたりの無言のにらみ合いが続く。
先に動いたのは少年だった。火を消し、わざとらしくため息を一つついた。
「……俺の占いを信じておらぬな。哀れなやつ。いや、哀れなやつだからこそ信心がないのだな。お前のようなやつは助言や良心を信じられぬ呪いがかかっているのだろう。――良い。それなら明日まで待ってやる。占いがあたったら明日金を払いに来い。それでいいだろう。」
「明日……?」
少年は頷くと、さらにもう一度ため息を付き、秋爾に聞こえる声でひとりごちた。
「ああ、なんて俺は善良なのだ、こんな惨めで哀れな男のために報酬もなく占って……さっきの女にも逃げられて今日の売上はゼロなのに……なんて健気な……せめて飲み物代くらいあれば……」
秋爾はしぶしぶ財布から五百円玉を差し出した。
「……前金、」
「しけておるな。」
黙っとれ、と返したくなるのをぐっと堪える。
「ふん。まあ良い。――一番最後の分かれ道だぞ。遠回りをしろ。明日、同じ時間、同じ場所にいる。当たったら必ず来い」
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