十三.ハナ――丘

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 こんなにも長い間燃え続けているのに、ごうごうと身体を包む炎の中で秋爾は人の形を保ち続け――それどころか焼けたところが一つもなく、肌も髪も生きている秋爾そのものだった。  生きた姿のまま燃え盛る火の内側でじっと立っていた。  何が起こっているのかわからなかった。  ハナは目を見開いてその光景をただ見つめた。  やがて秋爾は膝を折ってハナの前に跪いた。  体が動かない。  身じろぎひとつできないハナに向かって、秋爾の腕がそっと伸び、頬に触れた。くくりつけたクカの飾り紐が揺れ、鈴がチリリと鳴った。  燃えているその指は慈しむようにハナの頬を撫でていく。  何度も。何度も。まるでハナの名を呼ぶように、優しく。  熱さは感じなかった。ただ、体温のような温みがあった。  彼は真正面からハナをじっと見つめた。それから顔を近づけてくる。  ハナは秋爾の炎にのみこまれていく。紅くまばゆい光が自分を包み込む。その中で、はっきりと秋爾の姿を見た。  悲しそうな眼差し、唇――ハナは炎の中で秋爾の唇が触れるのを感じ、そのまま受け入れた。  その口の中はとろけるように温かく、焦げた砂糖のようにほろ苦い。  やがてゆっくりと唇は離れ、秋爾は立ち去る。  その火で辺りを照らしながら、山を下り、朝の森の中へ消えていく。  彼が一歩歩くごとに、腕につけた鈴が鳴る。  チリ、チリリ――境目を永遠に彷徨う鈴の音。  ハナは秋爾の行く末を見つめた。  山中で炎が点となり、小さくなっていく。鈴の音は消え、山の静寂は深まる。  身体にはまだ秋爾のぬくもりが残っている。  やがて炎が森に隠れて完全に見えなくなると、ハナは糸が切れたように意識を失い、深い眠りに落ちた。
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