14人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
1
私のバイトするお店「Maria's」は、個人営業のカフェだ。
家から自転車で七分ぐらいで到着できる。私が小学生の頃からずっとあるカフェで、ライムグリーンの制服がかわいくて、「大きくなったらMaria'sでバイトするんだ!」と誓っていたぐらいだった。
地元の高校を出て、地元の大学に通うようになってから迷わず「Maria's」に応募した。ショーケースにケーキを並べたり、コーヒーを入れたり、パフェを作ったりとやることが多く忙しいけれど、幼い頃からの憧れが叶い、すべてが嬉しさしかなかった。
残念ながら制服がモノトーン調になり黒がベースになってしまっていたけれど。
バイトを初めて四カ月も過ぎた頃のことだった。
いつものようにバイトの始めにバッシングをしようとしていたときだった。
窓側のカウンター席に一人の男の人が座っていた。
細身の少し癖のある髪質の人だった。
その横顔をみたとき、なぜかピリッと微少電流が身体を流れたような気がした。
なんだ?
思わず自分の右の掌を見たとき、その掌の向こうにいた彼がこちらを見た。
その顔をみたとき夏の雷が落ちたのかと思うほどの衝撃を受けた。
その人は、私が高校生のときに恋し恋焦がれてやまなかった杉田先輩だったからだ。
最初のコメントを投稿しよう!