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四辻ブルース
月が隠れた晩、辻で幾人かの声がした。土を擦る草履の音、肉と骨がぶつかる音、そして刃物が当たる音が。
ザ、と布を捌く音とともに、男の叫び声が響いた。
一人の侍が暗闇で倒れた。
滲んでいく視界には刀を持った者の姿が揺れている。その影がだんだん遠のいていくのが見えた。
背中が燃えるように熱い。首をさわるとヌルリとした温かいものがまとわりついている。生臭いようなにおいがした。
息が苦しい。
「死ぬのはいやじゃ・・・助けて・・・いやじゃ・・・まだ、死にたくない・・・助けて・・・」
ピピピピピピピ
汗びっしょりで目覚まし時計を止めた正宗日向子は、ため息をついてベッドから這いだした。
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