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日向子の秘密
「手荒なまねをしてすまなかった」
日向子と大垣はちゃぶ台を挟んで向かい合っていた。
「いえ、俺が悪いんです。いきなり手なんか握ってしまって申し訳ありませんでした」
「そうとは言え、こちらも素人相手に少しばかりやりすぎた。申し訳ない、この通りだ」
日向子は正座のままちゃぶ台の横へズイと出ると、手をついて頭を下げた。
驚いたのは言うまでもなく、この言葉遣いに加えて、普段よりも増す時代劇感。大垣は日向子へ困惑の視線を向けていた。
頭を上げた日向子はその様子を見て深いため息をつくと、大垣をじっと見つめてゆっくりと口を開いた。
「少し、話をさせてくれ。信じるかどうかはお前次第だがな・・・もちろん他言無用じゃ。それでよければ話をさせてくれ」
日向子の声は重く、大垣の耳にジンジンと響いている。
「わかりました。確かに、不思議だなと思うことは所々あったので・・・どうぞ、お話ください」
日向子の口から出る言葉はまるで、はやりの安っぽいコミックのようだった。
「私がこの体になる前の記憶は断片的なのだが・・・私は『侍のような女』ではない。侍だ」
大垣はぽかんと口を開けた。
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