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男同士
「なんかさ、今日の正宗さん、いつもと違う気がしない?機嫌いいよね」
思わずドキッとしてなんとなく返事をした。
「そ、そうですか?」
「あれ、大垣君、なんか知ってるの?」
山本のひと突きはいつも地味に痛い。
チクリと刺さっていつまでも指先に残る棘のようだ。
「さあ?」と適当にごまかした大垣だったが、嘘が下手な男のごまかしの態度ほど簡単なクイズはない。
「大垣君て、わかりやすいね」
文箱の中の礼状をすべて取ると、山本はフロアから出ていった。
(やっぱあの人苦手だな・・・)
山本と入れ違いで日向子が帰ってきた。
「山本とそこで会ったぞ。すまない、席を外していて」
「いいえ。ちょっとチェックしてすぐ持って行きました」
「なぁ、大垣、山本に何か言われたのだろう?」
「いやぁ、別に」
「お前のそのわかりやすさは何だ?子どもか?」
「日向子さんがいけないんですよ。山本さんが、なんか正宗さん今日機嫌がいいね、大垣君なんか知ってる?って言ったんですよ」
「お主、私のせいにする気か?」
「だって・・・」
「大垣、少しは嘘が上手くならねばやっていけぬぞ」
「納得いかないなぁ」
「一応、面倒につき合わせているのは自覚している。申し訳ない」
「いやぁそれは、元はといえば俺がいけないんで。言わなきゃいけない状況にしたのは俺だから」
あっという間に組み伏せられた大垣を、つい、思いだしてしまう。
「・・・ふふ、あんなに弱いとはなぁ」
「もう、それは・・・」
「しかし、助かったよ。一人で抱えるには、ちと限界であった。礼を言うぞ・・・」
「・・・はい」
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