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第5話 工事中
「どうする?帰るか?」
健が聞いた。釈然としていない日向は窓の外を眺めながら、
「もっかい戻ってもいい?」
「ああ、いいけどあそこもびしょびしょだぞ」
「うん。解ってる」
健はビートルをひまわり畑へと転回させた。
道路はしばらく線路と並行している。日向は線路を見た。葵ちゃん、あれに乗って帰るんだな。ウチと逆方向だ。
線路上には作業服にヘルメット姿の人たちが大勢いる。健はビートルを減速させた。道路の左端に工事車両らしいトラックやバンが数台、三角標識の向こうに停車していたからだ。
「土曜なのに仕事か…」
健は対向車の隙を見て工事車両を躱す。しばらく走って日向が声を出した。
「父さん、電車がさ、あんなとこに止まってる」
健が線路を見ると電車が線路上に停車している。
「ホントだな。信号待ちかな」
もうしばらく行くとまた別の電車が止まっていた。日向が気が付いた。
「父さん、電車、動いてないんじゃない? さっき工事してたじゃん」
「お? なるほど…」
「葵ちゃんたち、急いでたよね」
「ああ」
健は先程の千鶴の顔を思い出していた。無表情、自分の言葉もすべてスルーだった。仕方ないけど。
「父さん、葵ちゃんたち、送ってあげようよ。きっと困ってるよ、電車来なくて」
もっともな話だ。理屈は通っている。健は苦みを噛み締めながら、反対車線のコンビニに入り、ビートルをUターンさせた。
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