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はじめに
御斗田島で一〇〇年ぶりに“王”が交代すると聞いて、その島を知る者は誰もが驚いたことだろう。それも、王を島外のアルファに選ばせるという御斗田島史上初の方法で。
御斗田島は明治期に入ってからひとりの“国王”が作り上げたという、歴史の浅い小さな集落であるが、本土とは異なる独特なルールの元でその血統を守り抜いてきた。それを今回国王自らが変えると宣言したのだ。島民は元より本土の人間である、この“革命”に直接関わることもないであろうベータの筆者でさえも衝撃を受けた。
ヒトでありながらヒトとは違う生態を持ち、日本にありながら日本とは違う文化を育んできた御斗田島にはかねてより興味があった。このような形で島の歴史が変わる瞬間に立ち会えたことはライター冥利に尽きる。
これは筆者が半年間御斗田島に滞在し、島の王と住民、島を訪れる人々を取材した大変貴重な記録である。御斗田島の美しさと奇妙な文化、島民の生態を詳しく記した文献は今の所見当たらない。本書が御斗田島に魅入られた者達の知的好奇心を満たし、島に住む彼らの魅力を知る資料のひとつになれば幸いである。
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