チギ

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「僕は早いうちから王になってもらった方がいいと思うんですよ。カゲキは性格良くてもあんなにゴツくなっちゃ、ねえ。アヴノは綺麗だけど遊びすぎじゃないですか。どっちも王の自覚足りてないというか。子どものうちから王様って呼ばれてた方が御斗田島の王らしい大人に育つんじゃないですか」  チギがまだ幼いということもあって、島民の意見はどこかはっきりしないものが多かった。  事前に保護者の了承を得てから、放課後児童クラブにいるチギに会いに行った。整った顔立ちと他の子どもより頭ひとつ分高い身長は流石は国王候補、といった感じだが、友達とボードゲームで遊ぶ様子は年相応のあどけなさが残る。  児童館の一室を借りてチギから直接話を聞いた。国王候補としての自分については「よくわからないです」と言った。 「カゲキもアヴノも大人だから、僕よりあのふたりの方がいいんじゃないかなーって思ってます」  カゲキやアヴノのような意欲は見せなかった。それでも「王になったらしたいことは?」と問い掛けると「御斗田島を子どもがいっぱいいる賑やかな場所にしたい」と答えた。 「今は移住してきた人も子どもを産んじゃいけないルールになってる。王様の子どもならまだわかるんだけど、なんで余所から来た人同士の子どもも駄目なんだろうって。僕は友達も弟も妹もいっぱいいる方が楽しいと思うから、そのルールを変えたいです。あと王様の家に住んだら庭をいつでも誰が来てもいいようにする。みんなが遊べる公園みたいにしたい」  子どもらしい意見だが、しっかりした考えを持っていてそれをきちんと言葉にできる所には国王候補らしさを感じた。王の選抜があと五年遅ければ、チギは島民に期待される立派な候補者となっていただろう。
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