最後の子ども

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 我々が子どもの様子を見ている間、カゲキも病院を訪問してきた。彼は島に子どもが生まれたり新たに移住すると必ず様子を見に来るのだという。無類の子ども好きだ。  カゲキは感情を読み取りづらい顔付きをしているが、そわそわと保育器を眺める様子から嬉しさと心許なさが綯い交ぜになっているのが覗えた。筆者が声を掛けるとたどたどしくも「とても可愛いです」と顔を綻ばせた。 「でもこれで王の最後の子どもになると思うと少し寂しいです」  生まれた子どもはその季節により「ヘー」と名付けられた。「俺が王になったら皆にそれぞれ違う名前を付けたい」とカゲキは内緒話をするように筆者に告げた。  せっかくなので、カゲキにアヴノとの関係を聞いてみた。彼は「俺にとっては弟みたいな存在。アヴノが生まれた時も見に行った」と懐かしそうに語った。 「生まれた時から大きくて元気な子でした。この赤ちゃんよりもだいぶ大きかった。今は華奢な体つきだけど、子どもの頃は結構活発でしょっちゅう木登りしては落ちて怪我してました。今のアヴノは綺麗だけど少し痩せすぎかな」  その後カゲキはすぐ「勝つのは俺ですから」と取り繕うように言った。カゲキもアヴノもお互いを強く意識しているようだ。
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