七月九日土曜日

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 風呂場にいたアヴノ。下半身裸で血だらけだった。風呂場の床も真っ赤。黒とも紫とも赤ともつかない色の塊と管のようなもの。ふたつの生き物が転がっていた。数秒してから赤ん坊だと気付いた。  アヴノが赤ん坊のひとりの頭を掴んだのでカゲキが止めた。「何てことしてんだ」と言うカゲキに「だから殺すんだよ」とアヴノが答えた。 「そうじゃない。子どもを殺すなって話だ」  もう片方の赤ん坊が泣いた。口を塞いだアヴノの手をカゲキが振り払う。カゲキが古川氏を見ながら「アヴノを他の部屋に連れて行って欲しい」と頼んだ。慌てた様子だがしっかりとアヴノを支えて連れ出す古川氏。 「その辺にタオルないか」と言われたので洗面所からタオルをごっそり持ってカゲキに渡した。「巻き込んでしまって済まない」と言われた。  カゲキが子どもの身体を丁寧に拭いた。ふたり同時に抱く方法がわからないと言うので僕が片方を抱いて風呂場を出た。赤ん坊はふたりとも声を上げていたが抱き上げると大人しくなった。  アヴノは脱衣場に座っていた。悪露でバスマットが真っ赤になっていた。古川氏が「水飲む?」「横になった方がいいんじゃない」などと声を掛けていたがアヴノは答えなかった。  カゲキとアヴノのやり取りが始まる。 「妊娠を知っている人は?」
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