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「さあ」
「誰にも言わなかったのか」
「言えるわけないじゃん」
「相手は?」
「多分、客」
「これからどうするつもりなんだ」
「それ始末すれば解決じゃん」
「駄目だ」
カゲキの口調は強い。アヴノは「じゃあどうすんの?カゲキが世話してくれんの?」と睨みつけた。
「アヴノがしないなら俺がするよ」
「冗談だろ」
「本気だよ」
「王になるんじゃないの」
「なりたいよ。でもこんなことを隠したまま王にはなれない」
アヴノが俯いた。「馬鹿じゃないの」と言った。声が震えていた。
「ここでこいつら殺せば僕もカゲキも国王候補のままなのに」
「俺にはできない。アヴノが王になってくれ。アルファに選ばれる自信あるんだろ」
「カゲキに全部押し付けたままにできるわけないだろ」
部屋全体に響くような大声。顔を上げたアヴノは泣いていた。
古川氏まで泣いていた。「あーちゃん泣かないでよ。僕まで悲しくなっちゃうじゃん」と言った。
アヴノの声に驚いたのかカゲキの抱いていた赤ん坊が泣き出した。カゲキが立ち上がって赤ん坊をあやした。アヴノと古川氏は泣いているのにカゲキはどこか嬉しそうだった。
「大きいし元気だ。アヴノに似ている」
(以上。)
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