七月九日土曜日

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「さあ」 「誰にも言わなかったのか」 「言えるわけないじゃん」 「相手は?」 「多分、客」 「これからどうするつもりなんだ」 「それ始末すれば解決じゃん」 「駄目だ」  カゲキの口調は強い。アヴノは「じゃあどうすんの?カゲキが世話してくれんの?」と睨みつけた。 「アヴノがしないなら俺がするよ」 「冗談だろ」 「本気だよ」 「王になるんじゃないの」 「なりたいよ。でもこんなことを隠したまま王にはなれない」  アヴノが俯いた。「馬鹿じゃないの」と言った。声が震えていた。 「ここでこいつら殺せば僕もカゲキも国王候補のままなのに」 「俺にはできない。アヴノが王になってくれ。アルファに選ばれる自信あるんだろ」 「カゲキに全部押し付けたままにできるわけないだろ」  部屋全体に響くような大声。顔を上げたアヴノは泣いていた。  古川氏まで泣いていた。「あーちゃん泣かないでよ。僕まで悲しくなっちゃうじゃん」と言った。  アヴノの声に驚いたのかカゲキの抱いていた赤ん坊が泣き出した。カゲキが立ち上がって赤ん坊をあやした。アヴノと古川氏は泣いているのにカゲキはどこか嬉しそうだった。 「大きいし元気だ。アヴノに似ている」 (以上。)
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