アルファの上陸

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「僕の父親は百年以上続く大企業の代表取締役社長なんだ。父親は僕に会社を継がせる気はないらしいんだけど、働けとも言われていなくてね。やることを探していたのさ。この島の王様候補はみんな美形なんだろ。目の保養にもなるし楽しそうだと思ってさ」  どこか浮わついた印象のある男だが、王が選んだのだから何か決め手があったのだろう。  まずはカゲキの管理する畑へ案内した。神馬氏は「土のにおいがする。良い所だ」と言った。畦の雑草を刈り取るカゲキに「こんにちは」と挨拶をした。カゲキは発情期ではないようだが、神馬氏は彼がオメガであることをすぐに見抜いた。「君は国王候補じゃないのかい」「もう違う」というやり取りの後、カゲキが助けを求めるように筆者を見るので神馬氏に彼が国王候補を剥奪された経緯を説明した。  カゲキへの興味をなくすかと思いきや、神馬氏は「子どもかい?会いたいな。どこにいるんだい」とさらに食いついてきた。カゲキの家を訪問し双子に会わせると神馬氏は子ども達に触れながら「いいにおいだね」とニッコリしていた。  それから神馬氏はその日のうちにチギとアヴノへの挨拶も済ませた。国王候補がチギひとりだけということは事前にわかっていたようだが、それでもアヴノに会いたがった。  神馬氏は飄々としていているがどこか憎めない。
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