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(以下、未整理の記録)
神馬氏は目に見えない部分に非常に敏感な人物だった。
二時間目の授業を終えたチギに会いに行った時だった。神馬氏は深々とお辞儀をして挨拶をするチギの言葉を遮るように「君、腹減ってるかい」と言った。
「え?」という顔をするチギ。僕も戸惑って何も言えなかった。神馬氏はポケットから飴玉を出して「先生には内緒だよ」とチギに渡すと、「給食ちゃんと食べるんだよ」と言い残してさっさと学校を出て行ってしまった。
「あの子まだ行間休みなのにお腹空いてたんだね」
神馬氏が言った。お腹の鳴る音が聞こえたらしい。
「ご飯食べてないんじゃない。可哀想に」
僕は全く気が付かなかった。
アヴノに会った時には、開口一番「大丈夫?」と訊ねていた。アヴノは戸惑いながらも「えー?急になんですか?」と笑った。
「めちゃくちゃ元気ですよ。あ、でも今日はエッチできないんです。ごめんね」
「だろうね。また出直すよ。早く帰って休んだ方がいいよ」
そう言うと神馬氏は飲食代を払ってさっさと店を出てしまった。
「血のにおいっていうか、女の人からたまににおってくるやつ。絶対無理してるでしょ」
僕の嗅覚がまともだったら気付けただろうか。いや、彼は並の嗅覚ではない。
「僕はホテルに戻るよ。また明日ね」
神馬氏が手を振ったので僕はそこで立ち止まった。
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