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八月八日月曜日
「樋口さんが内緒にしてくれるなら」とカラドが島の北側の林に僕を連れて行った。
「あの人も可哀想な人だった。自分があの家に暮らしている間、死体が腐って臭くなるまで誰も家に来なかった。郵便屋さんも家から少し離れた所に置いた箱に手紙とか入れてた。自分を助けたことで周りに認められたかったんだと思う」
林の中に灯りのついた家があった。「まただ」とカラドが言った。家の前にはチギがしゃがみ込んでいた。チギは「ボーレイさん、と、樋口さんだ。こんばんは」と言った。「ボーレイ」はカラドのことらしい。
「また怒られたのか。だから黙っとけって言ったのに」
「だってー」
「余計なこと言ったら怒られるんだよ」
「だってさ、僕さ」
カラドとチギは知り合いらしい。チギが「お腹空いた」と言うとカラドは「仕方ないな」と袋に入ったたまご蒸しパンを差し出した。ポケットに詰め込んでいたので潰れている。チギは「やった、ありがとう」と受け取ってその場で食べた。
「早く入れてもらえるといいな」とカラドが言った後チギと別れた。
「あの子は親に怒られるといつも家を追い出されるんだ。ご飯もちゃんと用意されないんだって」
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