八月八日月曜日

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 彼が国王候補だと教えると「あの子じゃ無理じゃないか。でも王になってちゃんと世話してくれる人ができた方が幸せかもな」と言った。  波の音が聞こえるほど崖に近い林の中でカラドが立ち止まった。指の見当たらない右手も使って犬のように地面を掘った。ライトで照らすと穴の中に骨のようなものが見えた。 「最初に産んだ子ども、捨てて来いって言われて、最初は崖に落としたんだけど波で戻ってきちゃって、沖まで流れなくて。仕方ないから崖下りて拾って、ここに埋めて。それからは産まれたらここに埋めてた」  僕は何も言えなかった。カラドは続けた。 「わかってる。これは命だよ。自分が何をしたのかはちゃんとわかってるんだ。だからもうカラドとしてみんなの前には戻れない」  林を引き返す時にカラドはこうも言った。 「最初は期待してたよ。誰か探しに来てくれるんじゃないかって。でももう諦めた。期待するのも疲れるんだ。だからもういい。アルファに選んでもらって王になれるんじゃないかって期待して余計に疲れたくないんだ」  もう僕に国王の選抜についての話をして欲しくない、という意味だと解釈した。
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