20人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「どうして?交雑したのかい?」
カラドが苛ついているのを感じる。神馬氏は気付いていない。ヒヤヒヤする。僕は「彼は国王になる気がないんだ」と口を挟んだ。
「ふうん」と神馬氏は呟く。「それなら僕の家に連れて帰るよ。それならいいだろ」
「いい加減にしろ」カラドが声を荒げた。「もう構わないでくれ」
「どうして?少なくとも毎日風呂に入れるしベッドで寝られるよ。悪い話じゃないと思うんだけどな」
カラドが立ち上がった。左手で神馬氏の腕を掴んで林の奥へ進んでいく。辿り着いたのは彼が赤ん坊を埋めた穴だ。掘り返して神馬氏を突き飛ばすように穴の前に立たせた。
「自分の産んだ子ども。少なくとも五体はある」
神馬氏は何も言わない。カラドが続ける。
「それでも自分を連れて帰りたいか?」
小さく息を吐く神馬氏。しばしの沈黙。
「樋口君、彼の産んだ子どもがどういう状態か説明してくれないか」
意味がわからなかった。
「済まないね、見えないんだ」
そう言われても理解できなかった。
「樋口君は気が付かなかった?」
「気が付かなかったです」
神馬氏はフッと笑って「ドッキリ成功だね」と言った。開襟シャツを捲るとハーフパンツのゴム部分に伸縮三段式の白杖が差し込んであった。
最初のコメントを投稿しよう!